コーヒーで旅する日本/九州編|ツタに覆われた長門・仙崎のロースタリーカフェ「Cafe Struggle」。20年営みを続け見えた変わらないこと、変えるべきこと

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

オープンして2024年で20周年。ここ最近力を入れているのがエスプレッソ

九州編の第88回は山口県長門市にある「Cafe Struggle」。もともとは「廣田珈琲店」の名で開業したロースタリーカフェだ。長門市で生まれ育ち、さまざまな仕事を経験してきた店主の廣田吉斉さんは30歳のときに初めて飲食店で働き、接客・サービス業が自身が続けていきたい仕事だと実感。働いたのがカフェバーであったことから自然とコーヒーに興味を抱き、手網焙煎機を購入。趣味で焙煎を始め、ますますコーヒーにハマっていった。

メニューはコーヒーがメイン。希少なコーヒーとして知られるパナマ・ゲイシャ(イートイン650円、豆売り100グラム2000円)なども

廣田さんは「コーヒーについて専門的にどこかで勉強したわけではないので、ほぼ独学ですね。いろいろな自家焙煎店を巡り、自分が目指す味わいの方向性を見つけ、それに近づけてきたという感じ。だからうちのコーヒーは個性があるとか、フレーバーがすごく特徴的でといったような、特別押し出すことはそこまでないんですよ」と控えめに話す。

ただ、店を開いたのは2004年(平成16年)。今年で20周年を迎えるというから、その歴史は長い。長く店を続けてこられているのは、それだけ多くのファンに愛されてきたということだ。廣田さん自身が多く語ることはないが、確かなこだわり、ポリシーを端々に感じられる「Cafe Struggle」。その魅力に迫る。

店主の廣田吉斉さん

Profile|廣田吉斉(ひろた・よしあき)さん
山口県長門市生まれ。高校を卒業後、故郷を離れ、山口市内などでさまざまな仕事を経験。30歳から5年間、カフェバーで働いたこと、山口市内で出合ったおいしいモカに感銘を受け、趣味で焙煎を始める。2004年(平成16年)、長門市に「廣田珈琲店」をオープン。開業から13年を経て、環境や心境の変化もあり、屋号を「Cafe Struggle」に変更。今に至る。

もがきながら、楽しみながら

店があるのは仙崎みすゞ通り

長門市の観光名所の一つになっている金子みすゞ記念館のほど近く、ツタに覆われた倉庫のような建物に小さく掲げられた木製看板。うっすらと「廣田珈琲店」と見て取れるのは、以前の屋号だ。現在は「Cafe Struggle」に改名。まずは廣田さんに屋号の意味、なぜ改名したのかなどを聞いてみた。

とろりと濃厚なクレームブリュレ(450円)。すっきりとした後味のカフェラテ(450円)と一緒に

「もともと菓子作りが好きだった妹と2人で店を始めたんです。自家焙煎コーヒーと自家製スイーツが柱という、まぁ普通のカフェですよね。ただ妹が結婚し、ずっと店に立ってもらうということができなくなり、スイーツの種類も少し減りました。正直、屋号を変える必要はなかったのですが、飽きやすい私の性格もあり、ちょっと環境面から変えてみようかなって。Struggleというのは“悪戦苦闘”や“もがく”といった意味がある俗語で、いろいろ自分が好きなことを試行錯誤しながらでもやっていけたらという思いが少しだけ。ただ、本当に特に大きな意味はないんですよ」

【写真を見る】レバー式エスプレッソマシン、BOSCO Sorrento。洗練されたデザインも魅力

そう廣田さんは話すが、店内に現在は使われていないラ・マルゾッコのエスプレッソマシンが無造作に置かれ、代わりにカウンター内に据えていたのは、メタリックなボディ、2本のレバーが印象的な小さなエスプレッソマシン。あまり見たことがないマシンだ。

「ここ最近、どれだけエスプレッソをおいしくできるかということを考えていて。このマシンはBOSCOというイタリア製のエスプレッソマシンで、オートメーションではなく、人力で圧力をかけて抽出する仕組みなんです。このマシンに変えたからといって劇的に味わいが変わるわけではないのですが、自分自身が変化を楽しむという意味もあって導入を決めました。それに以前使っていたマシンに比べると電気代が半分ぐらい安くなった。光熱費削減の意味も込めて」と笑う。

豊かで香り高いクレマが抽出できる

そういった話を聞くにつれ、廣田さんはとても控えめな性格に見えるが、常になにかおもしろいことを探しているように感じる。2023年末に中古でちょうどいいサイズの発酵機も手に入れたことから、フォカッチャを手作りし、イタリアンスタイルのサンドイッチを新たにメニューに加える予定だという。

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