70年以上の歴史を持つケンミンの「焼ビーフン」はなぜ“今”人気?きっかけはコロナ禍での機転力

東京ウォーカー(全国版)

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小麦に含まれるたんぱく質の一種を摂取しない食事法「グルテンフリー」の需要が高まり、米粉を使った食材に注目が集まっている。パンやスイーツ、パスタなど多彩な米粉グルメが登場するなかでも、今新たに話題となっているのが米めんを代表する「ビーフン」だ。

注目されるきっかけを作ったのは、神戸・元町に本社を構える「ケンミン食品」。国内ビーフン市場でトップシェアを誇る食品メーカーで、SNSでは「ケンミンのビーフンはびっくりするくらいおいしい」「簡単でうまい」「お弁当にもぴったり」など、食べてみたくなる感想が多く寄せられている。

今回は知られざるビーフンの魅力に迫るべく、ケンミン食品 広報担当の平奥恵里菜さんに取材。会社の歴史、商品の開発秘話、注目されたきっかけ、今後のビーフンの可能性など、気になるアレコレを聞いてみた!

ケンミン食品を代表する焼ビーフン


ビーフンにこだわり続けて70年以上。ギネス世界記録にも!

1950年に創業されたケンミン食品。戦後、台湾や東南アジアから引き揚げた日本人から寄せられた「現地で食べたビーフンの味をもう一度食べたい」という声に応え、台湾出身の高村健民氏が神戸で事業を立ち上げたことから歴史は始まった。

創業時は配給米だったインディカ米(日本で言うタイ米)を使用し、高村氏宅の土間で生ビーフンを製造していたという。地元の中華料理店で販売をはじめ、神戸の人々に少しずつビーフンを広めていった。しかし、1958年に日清食品が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売し、状況は一変。瞬く間にインスタントラーメンブームが巻き起こり、数々のメーカーがインスタントラーメン市場に参入した。他社が即席麺の開発に注力するなか、ケンミン食品はビーフンの製造にこだわり続けたという。

右から2人目が創業者の高村健民氏


そして1960年、現在の看板商品の1つであり、3分間炒めるだけで簡単に調理できる「ケンミン焼ビーフン」が誕生した。「『どうやって作ればいいか分からない』『作っても失敗する』というお客様の声を受けて、フライパン1つで調理できる味付きのビーフンを作りましたが、開発に至るまでにはさまざまな苦労がありました」と平奥さん。

「ラーメンは瞬間油熱乾燥法(麺を高温の油に入れて乾燥させる方法)で即席麺を開発する一方、ビーフンは油で揚げるとパフ化してしまい、油を使用できないのが課題でした。試行錯誤の結果、熱風で乾燥させる“熱風乾燥法”を考案し、ノンフライのビーフンが実現しました」

数々の困難を乗り越えて開発された焼ビーフンは、鶏ダシが利いた醤油味で味付けされ、ゆで戻しと調味料も不要。“世界一簡単に美味しく料理できる米めん商品”としてロングセラー商品に。今では、1番人気の「鶏だし醤油」をはじめ、「こく旨塩」や「幻のカレー」など種類豊富に展開している。そして発売60周年を迎えた2020年には“最も長く販売されている焼ビーフンブランド”としてギネス世界記録に認定された。

60周年を記念し、“焼ビーフンの思い出”を募集したところ、反響は社内の想像を上回り3000通以上のエピソードが寄せられたという。

「『母から私、私から娘へと三世代にわたって受け継いでいる味です』という感想をはじめ、『小学校の給食で初めて食べた時、そのおいしさに衝撃を受けました』『野菜嫌いの子供が焼ビーフンをきっかけに野菜が好きになり、大人になって野菜ソムリエになりました』『男手ひとつで育ててくれた不器用な亡き父親が、誕生日会にビーフンを出してくれたのが懐かしい』など、たくさんの心温まるお話をいただきました」

感想を見ると、いかにビーフンが家庭で親しまれてきたのかがよく分かる。ちなみにビーフンは地域によって消費量が異なり、西日本を中心に親しまれているそう。特に九州地方での個人消費量が多く、関東地方と比べると約2倍の量が食べられているんだとか。ケンミン本社のある兵庫県でもソウルフードとして馴染み深いので、兵庫県民にとっても特別な味なのではないだろうか。

即席焼ビーフンの初代パッケージ


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