影山貴彦のテレビのホンネ。道上洋三と久米宏 「キャスト」震災企画

関西ウォーカー

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道上洋三と久米宏


久米宏が、 大切なのは 「日常」 と語った。 報道に求められるのは日常の積み重ねだ


阪神・淡路大震災。1995年1月17日だ。25年の歳月が流れたとは信じられないほど、心の中に深く刻まれている。ただ、そんな風に感じるのは、自分が50数年の人生を歩んできたからだ。当たり前のことを申し上げるが、25歳以下の人は、この世に命を授かってさえいない。「記憶」という点では、30歳以上の人くらいでなければ、鮮明には残っていないはずだ。それほどの時間だ。だからこそ風化させてはならない。

今年は区切りの年ということで、テレビ各局は例年にも増して震災の特別企画を組んだ。ABCテレビが放送した、1.17震災特別企画「震災25年〜キャスト×久米宏 つなぐ次代へ〜」 もそのひとつ。「ニュースステ ーション」(ABC系)のメイン司会者だった久米宏は、震災当時50歳。神戸の地を再訪し町の人々の話に耳を傾けた。全国ネットのニュースを間に挟みつつ、ABCのスタジオで、エンディングまで約2時間生出演した。

放送が終わるギリギリ、それこそコンマ1秒まで「久米節」を聞かせ、ピシっと収める鮮やかな姿は健在だった。ABCラジオ「おはようパーソナリティ道上洋三です」を43年近く務める道上洋三との対談も聞きごたえがあった。道上は震災が起こってから 44分後の午前6時30分から、日々被災者に寄り添った放送を続けた。私も当時、ラジオの報道特別番組のディレクターとして、少しでもリスナーたちの役に立ちたいと汗を流してい たので、「遠くの親戚より近くのラジオ」という話は心に響いた。

久米が、大切なのは「日常」と語った。メディアができることは、区切りのときにのみ時間や紙面を割くのではなく、私たち受け手に自然災害に対する注意を日常的に喚起することだ。「命を守ること」を最優先とする意識を高めるため、報道に最も求められるのは小さな日常の積み重ねに他ならない。

1.17震災特別企画 「震災25年~キャスト×久米宏 つなぐ次代へ~」


元毎日放送プロデューサーの影山教授


【著者プロフィール】影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)、「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。

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