影山貴彦のテレビのホンネ。脱力系「耐え子の日常」、優しく救われる思い

関西ウォーカー

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「耐え子の日常」


脱力気味な笑顔で乗り越える主人公、1日が優しく救われた気分になる


日々の生活は、思うようにならないことが多いものだ。楽しいことももちろんあるが、辛いことが上回る。それが人生だ。「努力すれば必ず夢は叶う」と安易に言葉にすることは、時として残酷なことだと思う。子どもたちにも軽々にそんなセリフを吐くものではないと思っている。

 こんなことを書くと、「このコラムを書いてる人間は、ネガティブなヤツに違いない」と感じられるかもしれない。だが、現実は全く逆である。他人と正確に比べることはできないが、私自身、かなり楽観的なタイプだと自認している。その理由をなぜかと考えないところが、既にノー天気ということだろう。

 テレビの世界でも、仕事や家庭、友人関係にと「悩める人々」を描いたドラマが増えてきた。特に若い女性が主人公の作品が目立つ。多くの共感を得ていることもあり、ここしばらく各局のどこかで、そんなドラマが登場している。

 おっと、ドラマだけではないようだ。10月にスタートした短編アニメ「耐え子の日常」(ABCテレビ)がとても面白い。そろそろ谷川の漫画をアニメ化したものだが、毎日の生活で、やや辛い目に繰り返し遭遇しつつも、やや脱力気味な笑顔で健気に?乗り越える主人公、辛抱耐え子のエピソードを短くまとめた佳作だ。

 いささかデフォルメ化した展開もある一方、若い女性に限らず、世代を問わず多くの人が頷けるような、「理不尽話」が散りばめられている。声優たちのテイストがいい。音楽の「淡々さ」がまたいい。何よりテンポがいい。そして、深夜という放送時間帯がいい。取り立てて何もなかった、いや、どちらかといえば、ちょっとイマイチだった1日の終わりを振り返るでもなく思い出しているタイミングで、「耐え子の日常~♪」のテーマが流れてくると、優しく救われた気分になる。おすすめです!

元毎日放送プロデューサーの影山教授


【著者プロフィール】影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)、「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。

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