北海道ゆるっと鉄道旅~夕張支線3:2019年春に廃線になる駅めぐり

北海道ウォーカー

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石勝線の新夕張駅と夕張駅の間は、通称夕張支線と呼ばれています。かつては石炭列車が多数行き交う北海道内の主要路線の一つでしたが、2019年4月1日に廃止が決定。廃止日が近づくにつれ、全国から鉄道ファンが乗りに訪れています。鉄道があった歴史を記憶に刻むべく、新夕張駅から夕張駅までの列車の旅をしつつ、途中の3つの駅を紹介します。

鹿ノ谷駅へやってきた夕張行普通列車


無人駅で一流の味~沼ノ沢駅とレストランおーやま~


秋色に染まる沼ノ沢駅~清水沢駅間を走る普通列車


新夕張駅を出た夕張駅行きの列車は、すぐに左へ大きくカーブします。車窓右手には特急列車や貨物列車が通る石勝線の高架橋が一直線に山のほうへと続いている様子が見え、左手にはメロン畑などの農地や草むらが広がります。木々の間を抜け数分で一つ目の駅、沼ノ沢駅に到着します。

沼ノ沢駅はかつて、近隣にあった真谷地(まやち)炭鉱で採掘される石炭輸送の拠点駅として長年賑わいました。1987(昭和62)年に炭鉱が閉山すると貨物列車の発着がなくなり、駅構内に多数あった線路も撤去され、現在は普通列車が日に5往復停まるのみの無人駅です。このように駅の歴史だけ聞くと寂しい無人駅のように感じるかもしれませんが、それは大きな間違い!

沼ノ沢駅には、かつて駅事務所だった場所を活かした絶品の洋食レストランがあるのです!


駅舎には洋食レストラン店「レストランおーやま」があります。オーナーシェフの大山さんは帝国ホテルのレストランで長年腕をふるってきた名料理人。1日5往復しか列車が来ない無人駅で、一流ホテルの味わいを気軽に楽しめるなんてびっくりです。

おすすめメニューは、夕張市の名産の一つ、長いもを使った「長いもハンバーグセット」(1680円)


長いものハンバーグは、100%ビーフにすりおろした長いもを練りこんだハンバーグのタネを焼き上げ、すった長いもをかけてたもの。甘辛い味わいのソースと長いものおろしとともに、長いもハンバーグをひと口。ふわりとした食感で、とても上品な味わい。ガツガツ食べるのではなく、繊細な味わいをゆったり堪能したい逸品です。お店の佇まいはレトロですが、味は一流。ぜひご賞味を!

かつての交通の要衝はこの先も街の中心地の一つ~清水沢駅~


沼ノ沢駅から夕張駅へと向かってさらに進んでみます。沿線には農地や空き地が見えつつも、住宅なども数多く見受けられます。沼ノ沢駅の隣、南清水沢駅を過ぎ清水沢駅に近づくとさらに建物が多くなった印象で、街にやってきたという感覚になります。

清水沢駅の周辺には商店や食堂があるほか、夕張市内を巡るバスが発着します。タクシーも客待ちをしていました


清水沢駅はかつて、南大夕張駅方面へ向かう三菱石炭鉱業大夕張鉄道線の乗り換え駅。三菱大夕張炭鉱や南大夕張炭鉱から石炭を運び出す三菱石炭鉱業大夕張鉄道線の旅客列車や貨物列車が発着していましたが、同線は1987(昭和62)年に廃止。その後貨物列車の発着もなくなり、現在は普通列車が行き来する無人駅です。

左の駅舎近くにかつて三菱石炭鉱業大夕張鉄道線のホームと線路があり。空き地部分には石炭列車が行き交う貨物線がありました


使われなくなった駅事務所部分はベニヤ板で封をされていますが、駅舎は現役。駅舎内には昔の夕張市の写真が数多く掲示されていました


とはいえ、清水沢駅がある清水沢地区は夕張市が進めるコンパクトシティの推進計画で都市拠点の一つと位置づけられていて、市内を巡るバスの重要な発着拠点として整備が進められています。鉄路が消えてもこの地区は夕張市の中心地の一つであり続けることに変わりありません。

競合鉄道路線の夕張鉄道も発着していた無人駅~鹿ノ谷駅~


清水沢駅を出発すると、しばらくは山あいの坂道を登り続けます。エンジン音を唸らせ、カーブ区間で線路がきしむ音を立てながらゆっくりゆっくり山の中を奥へ奥へと進みます。少しずつ視界が開け、登り勾配が少し緩やかになると、ほどなくして鹿ノ谷駅へ到着します。

今は小さな無人駅。でも、かつては競合鉄道会社も発着するターミナル駅でした


鹿ノ谷駅も、沼ノ沢駅や清水沢駅と同様、かつてほかの鉄道路線が発着していました。ただちょっと違うのは、近隣の炭鉱からの石炭を夕張線(現:石勝線・夕張支線)経由で運搬するための鉄道ではなく、夕張線と競合する鉄道会社の路線ということ。この路線は夕張鉄道と言い、夕張地区から鹿ノ谷駅までは夕張線と概ね並走し、鹿ノ谷駅で夕張線と分かれた後は札幌市の隣、江別市の野幌駅まで通じていました。石炭輸送とともに旅客輸送もしており、特に札幌市方面へ向かう旅客輸送では夕張線と夕張鉄道は競合関係でした。かつて夕張市がいかに繁栄し、人やものの移動が多かったということを物語る史実です。

現在の鹿ノ谷駅はホーム1面1線のみの無人駅。かつて両線の線路が多数あった広い空き地が目の前に広がり、長い人道橋が空き地の上をまたいでいます


線路と空き地をまたぐ橋の上に立ち駅舎と広い空き地を眺めていると、石炭列車や旅客列車が多数行き来していた往時の様子がぼんやりと頭の中に浮かんできそうな気分になります。昔の様子を思い起こさせ、想像力をかき立てる不思議な力を感じる、古きよき無人駅です。

鹿ノ谷駅の近くの谷間には、夕張鉄道の橋脚跡が残っています。近くには夕張支線の鉄橋と、かつて夕張線が複線だった時の橋脚跡もあります


次回は終着の夕張駅へ行き、駅近のおすすめスポットを巡ります。

レストランおーやま ■住所:夕張市沼ノ沢857-1 沼ノ沢駅内 ■電話:0123・57・3911 ■営業時間:11:00~LO18:00※18:00以降は電話予約のみ可 ■休み:月曜※祝日の場合は翌日休み ■席数:38席(喫煙可)

川島信広

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