北海道ゆるっと鉄道旅~夕張支線1:廃線間近の支線の歴史と名物SLの新たな出発

北海道ウォーカー

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2019年4月1日に廃止が決定した石勝線夕張支線(新夕張駅~夕張駅)には、連日多くの鉄道ファンらが乗りに訪れているようです。みなさんは乗車したことありますか?

追分駅近くにある「安平(あびら)町鉄道資料館」に展示されていたSL。2019年春からは新たにできる「道の駅 あびらD51(デゴイチ)ステーション」で展示されます


今回は、かつての夕張線の始発駅であり、石勝線と室蘭本線が接続する追分駅から夕張駅の間にある見どころや注目スポットを4回連載にて紹介します。第1回目の今回は、路線の歴史と追分駅について。これから乗りに行くというみなさんは必見ですよ!

特急列車と1両編成の普通列車が行き交う石勝線


追分駅に停車中の特急「スーパーおおぞら」と石勝線の普通列車。広大な空き地はかつて石炭列車などが多数並んだ線路跡です


石勝線は南千歳駅から新夕張駅を通って新得駅までと、新夕張駅から夕張駅までの2つの区間がある路線。前者は札幌駅と帯広駅や釧路駅を結ぶ特急が通る北海道内有数の幹線ですが、後者は普通列車が日に5往復のみの区間です。

かつては追分駅を起点に紅葉山駅(現在の新夕張駅)を通って夕張駅までの区間と、紅葉山駅から登川駅(現在は廃止)までの区間を合わせて夕張線と称していました。1981(昭和56)年に石勝線の千歳空港駅(現在の南千歳駅)と新得駅が開通すると同時に、夕張線は石勝線に編入。追分駅から紅葉山駅間は線路の改良をしたうえで石勝線へ転用し、紅葉谷駅を新夕張駅へと改称。紅葉谷駅から夕張駅間は支線扱いに、紅葉谷駅から登川駅間は石勝線開業の直前に廃止となりました。それ以来、新夕張駅と夕張駅の間の名称は正式には石勝線であるものの、通称で夕張支線や夕張線と言われてきました(この記事では支線部分を夕張支線、石勝線開通前の路線を夕張線と表記します)。

石炭産業の浮き沈みとともに歩んだ夕張支線


夕張支線の清水沢駅はかつて線路が複数あり、私鉄「三菱石炭鉱業」の路線も発着していました


夕張線の歴史は古く、1892(明治25)年に北海道炭礦鉄道室蘭線の支線として、追分駅と夕張駅の間が開業したことに始まります。比較的古くから鉄道が敷設された理由は、夕張地区の石炭を輸送するため。室蘭本線とともに石炭輸送の大動脈として長い間利用されてきました。

大正時代後期から昭和時代初期にかけて、夕張線の追分駅から夕張駅まで複線だったそうです。つまり、複線にするほど石炭輸送列車が多数運行されていたということ。特急列車が多数行き交う現在の石勝線が全区間単線なのに、かつての夕張線が一時期とはいえ複線だったとは、石炭産業がいかに華やかだったのかという証。夕張地区から炭鉱の火が消え久しい現在、日に5往復のみ運行している夕張支線の姿からは想像できないほど、かつての夕張線は一大幹線だったのですね。

鹿ノ谷駅付近には複線だった時の橋の跡が残っています。奥の橋は現在の夕張支線です


夕張支線の沿線をじっくり見て回るのも一興です。今は広い草むらでも昔はここに線路が並び、長大な石炭列車が行き交っていたのだろうな、と想像できる場所がいくつもあります。ホームが一面しかないのに広大な敷地がある駅、やけに長いこ線橋。複線だった当時の橋の跡なども残っています。列車の本数が少ないので時間が限られますが、途中下車して賑やかだった面影を探してみるのもオススメです。

SLとともに歩んだ交通の要衝、追分駅


追分駅前にはSLの動輪がモニュメントに。鉄道の要衝として発展してきた証


石勝線と室蘭本線が交わる追分駅は、今も昔も交通の要衝。とくに昔は、夕張方面の石炭列車と岩見沢方面の石炭を満載した列車などが合流する、一大鉄道拠点でした。旅客列車が発着するホームのほかに石炭列車など貨物列車用の線路が多数あり、当時の駅構内はかなり広大。石炭列車などを牽引する機関車の拠点となる追分機関区もありました。

現在機関庫はなく貨物列車用の線路もなくなりましたが、追分駅から歩いて10分少々の場所にある安平町鉄道資料館(2018年10月現在休館、2019年4月に道の駅でオープン予定)に、鉄道の要衝駅だった面影が残っています。ここには昔の客車をはじめ、かつての夕張線や室蘭本線などに関する鉄道資料が保存されています。

夕張線のサボ(列車の行先案内板)をはじめさまざまな資料があり、見ごたえ十分!


長いこと目玉の展示物だったSL「D51-320号機」は、追分機関区に所属して夕張線や室蘭本線などで活躍してきた機関車。2019年4月に国道234号沿線に開業予定の「道の駅 あびらD51ステーション」に移転して展示される予定です。鉄道資料館に展示されていた時は、旧追分機関区の機関士などが結成した「安平町追分SL保存協力会」の手によって日常的に整備されていて、今にも走り出しそうなくらいピッカピカ。新たな道の駅での展示が始まると、道の駅の人気者になることは間違いないでしょう。

2019年4月まではSLの移転準備と作業のため鉄道資料館が休館になるのとともに、SL見学はできませんが、2019年の春には道の駅でSLと再会できます。ほか展示していた鉄道備品類の公開はまだ決定していませんが、保存・保管され続けます。

春から秋まで月2回の定期公開日には車庫の中から外へ動かし汽笛を鳴らすなど、まるで現役のSLのような姿を楽しめました


かつてこの地で石炭輸送に奔走したSLが新たな新天地で活躍を始める2019年春、くしくも夕張支線は廃止になります。単なる偶然とはいえ、これもきっと何かの縁かもしれません。追分駅がある安平町は2018年9月に発生した北海道胆振東部地震により大きな被害がありましたが、道の駅の誕生が復興の後押しとなることを願います。

SLの心臓部も見ることができました


間もなく新たな時代の幕開け。まずはその前に夕張支線に乗車して、自分なりの想い出の一コマを創りましょう。

次回、追分駅から夕張駅に向かう列車の旅を紹介します。

安平町追分SL保存協力会のみなさん


道の駅 あびらD51ステーション ■住所:安平町追分柏が丘 ■開館予定:2019年4月

川島信広

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