新感覚の非日常体験を!劇場型レストラン&ラウンジ「水戯庵」レポ
東京ウォーカー(全国版)
この春、東京・日本橋に、非日常的な体験を楽しめる新たな注目スポットが誕生した。福徳神社に隣接する屋外広間「福徳の森」の地下にその店はある。
「水戯庵」と名付けられたこの劇場型レストラン&ラウンジでは、能を中心とした伝統芸能の公演が、毎日開催されている。店を手がけたのは、「アートアクアリウム 金魚シリーズ」などで知られる、木村英智氏だ。
ランチタイム、ティータイム、ディナータイムには能や狂言を、ラウンジタイムには、芸納言と呼ばれる女流芸能師による演舞や演奏を実施。これらの伝統芸能と食事を一緒に堪能できるのが「水戯庵」の醍醐味だ。
ランチタイムおよびディナータイムでは、現存する最古の江戸前寿司処「すし栄」による寿司を味わえるほか、ティータイムでは京都の老舗和菓子店による菓子や「福寿園」のお茶が織りなす、和のアフタヌーンティーセットを提供。ラウンジタイムは、酒や一品料理をアラカルトで楽しめる。
能を鑑賞した後に始まる、華やかな宴。時代劇でお殿様が優雅に楽しんでいたあの世界が、「水戯庵」では現実のものとして連日繰り広げられているのだ。
しかし、「水戯庵」がどんなに画期的なスポットであったとしても、能をはじめとした伝統芸能に敷居の高さを感じる人も多いだろう。かく言う記者もそのうちの1人。今回の取材で、生まれて初めて能を鑑賞した。店に行くまではどのような雰囲気なのか想像がつかず、不安もあったが、一歩店内へ足を踏み入れた瞬間、一気に異世界へと誘われた。
上品なお香の香りが鼻をかすめ、それだけで和の空間へ来たことを実感させられる。エントランスから続く通路の壁に飾られた、江戸・明治・大正期の浮世絵や版画に迎えられ、客席へ足を進めた。
正面に舞台が設けられた店内は、洗練された現代的な雰囲気がありつつも、伝統を感じさせる厳かな空間。店内を彩る伝統工芸品は貴重なものばかりだ。
もちろん、舞台にもこだわりが光る。能舞台の形式にならった三間四方(約5.4m四方)の舞台は、鏡板に描かれた老松が迫力満点。この老松を描いたのは、狩野派の絵師とのこと。気軽にこの老松を見ることができるのは、奇跡的なことだと木村氏は話す。
舞台のすぐ目の前には、特等席と呼ぶにふさわしいソファボックス席(A席)がある。その距離たるや、まさに目と鼻の先。これまで能を観たことが無かった記者でさえも、「こんなに近くで能を観られることはない」という木村氏の言葉に、大いに納得した。
また、「水戯庵」ではこれまで伝統芸能に馴染みのなかった人でも楽しめるよう、さまざまな工夫が凝らされている。例えば、今回記者が鑑賞した能の演目「船弁慶」は、通常1時間半ほどの時間を要するが、「水戯庵」ではダイジェスト版として、最も面白い場面のみを15分ほどに短縮して上演。
さらに、複数の流派が日替わりで出演するため、多少の違いはあるものの、ストーリーや見どころの解説に加え、写真撮影タイムが設けられることもあるという。
者が鑑賞した日は、能面を取った能楽師が登場し、出演者そろっての写真撮影が行われたが、ステージの上で舞っている姿を撮影できたり、舞台終了後に出演者が客席へ降り、会話をしながら撮影できたり、さまざまな形がとられているそうだ。
予備知識がない中、どこまで能の世界に入り込めるか不安だった記者だが、「いよぉ~!」という掛け声に続き「ポン」と鼓が鳴り、囃子方の演奏が始まると、これまでに体験したことのない迫力に圧倒され、目が離せなくなってしまった。
能装束を身に着けた能楽師による舞は、重厚感があり、単純な表現だが美しくかっこいい。難しいことを取り払い、自然体で能の魅力を体感している自分がいた。
料金はランチタイムおよびティータイムが6500円~1万2000円、ディナータイムが9000円~1万8千円。ウェブサイトまたは電話にて、予約を受け付けている(ラウンジタイムは予約なしで利用可)。
伝統芸能に触れる機会が無かった人も、感性を刺激される瞬間がきっとあるはず。新感覚の非日常的な体験を、「水戯庵」で楽しんでみてはいかがだろうか。
水梨かおる
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