日本酒ブームの裏には意外な事情が!? 酒店&酒フェス発起人が教えてくれた、日本酒のリアル

関西ウォーカー

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関西ウォーカーでは、16年1月に“日本酒ブーム”として特集を展開。また、新店をリサーチするなかでも、日本酒を目玉にする店をよく目にする。日本酒専門店はなぜ増えているのか、市場はどう変化しているのか、日本酒を扱うプロにリアルな状況を聞いた。

日本酒が多様化した理由とは?


Q.日本酒専門店、なぜ増えている?


A.蔵元の代替わりや技術の向上で、昔はタブー視された酒が増え、日本酒市場が盛り上がったから


「わかりやすいところでいえば、甘味や酸味の強い酒が増えましたね」とは、大阪では最大級の元祖酒フェス「上方日本酒ワールド」主催者の一人である「味酒 かむなび」の店主・伊戸川さん。一方、大阪を代表する酒販店「山中酒の店」の井上店長に聞くと「それまで日本酒の業界では、タブー的な味わいだった“酸っぱい味”の日本酒などを意図的に作る酒蔵がでてきました」。

実は日本酒業界では「酸は劣化に近づく」と嫌われていた。が、「景気が悪くなって多くの蔵元が代替わり。跡継ぎはそういう酒に抵抗もない」(伊戸川さん)。劣化を防ぐ技術革新もあり、挑戦的な酒蔵が、時代と共に変化した消費者の嗜好に合わせて甘く酸味の強い酒を造るようになったという。

結果として、従来の多数派だった淡麗辛口以外にも、さまざまな味わいの酒が市場に現れ、日本酒シーンが盛り上がったといえる。

昨年、大阪天満宮で行われた「上方日本酒ワールド」の様子。飲食店と酒蔵がチームとなって出店した。6,000人以上の人が日本酒を楽しんだ


蔵元にファンの声が届くようになった!


これを機に酒蔵も行動を始め、増えてきたのが日本酒イベント。その元祖でもある「上方日本酒ワールド」は年を追うごとに参加者が増え、現在は参加者6000人を超える。「日本酒を知ってもらう入門イベントですが、酒蔵と消費者がつながって、一緒に楽しめるのも魅力なんです」(伊戸川さん)と言うように、酒蔵が直接耳を傾けることで、多様なニーズに合った酒を造るようになったそう。また、酒蔵とコラボイベントを開催する店も現れるように。

関西の小規模酒蔵がおもしろい動きをしている


さらに現在の酒蔵について聞くと「以前は、蔵ごとにいくつもの銘柄があったりしましたが、最近は絞り込む傾向もありますね。飲み手が混乱するのが理由の一つ。そこで、戦略的に一銘柄を絞り込んでこれと決めたおいしい酒に力を注いで造るという選択をする蔵も出てきて、実際絞ったことで売上を伸ばしている場合もあります」(井上さん)。

また、ユニークな動きとしては、「関西は、灘・伏見の大規模な酒造会社以外は、小規模な酒蔵が多い。その小さな酒蔵がおもしろいことをしていますね」(伊戸川さん)とも。

【画像を見る】「サケホール 益や」(京都市)には、壁に一升瓶がズラリとディスプレーされ、女性店主の益田さんのひと言が添えられている


例えば「サケホール 益や」(京都市)の益田店主が女性人気が高い酒として紹介してくれた「銀シャリ」を造っている京都の白杉酒造は、蔵人3人の小規模な酒蔵。「銀シャリ」は酒米ではなく、飯米ササニシキを100%使う珍しい日本酒だ。そんな小規模酒蔵の個性的な酒を探すのも楽しいだろう。

Q.最近の新店の特徴は?


A.カジュアルなスタイルの、若い店主の飲食店が増えている


日本酒を目玉とするお店が増えていることを伺ったが、新店に共通するものはないのか聞いてみた。「月に数軒のペースで新規にお取引をする店が増えている印象ですが、若い店主が多いですね」(井上さん)とあるように、若い店主の日本酒居酒屋は増えているようだ。イベントを開催するたび、多くの店や店主を見てきた伊戸川さんから「若い店主の方は、固定観念に縛られずにチャレンジ精神が旺盛で、日本酒と料理との合わせ方もおもしろいですよね」との意見も。

そこで、今増えている均一提供をしている店や飲み放題店について聞いてみると、「もともとは、地酒専門店の看板を掲げるちょっと敷居の高い店が多かったのですが、今は日本酒が大衆化しているということのあかしかもしれませんね。自分の好みの日本酒を見つけるには、よいと思いますよ」(井上さん)とのこと。

昨年12月のオープン以来、行列が絶えない店「魚屋スタンドふじ子」(大阪市)では、有名な銘柄「獺祭」など約13種が410円均一で飲める


日本の大事な食文化として考えると「うちの店などが“日本酒専門店”と呼ばれているのがおかしい。本来、日本の居酒屋であれば、どこでもいろんな日本酒が飲めて当然ぐらいであってほしい」(伊戸川さん)という意見も。そういった意味では、プロの2人によれば、均一や飲み放題は、日本酒を知っていくスタイルの一つとして楽しむべきということだった。

Q.今後どんなお店がくる?


A.和菓子、中華に合わせるなど意外なマリアージュを楽しむ、新スタイル酒場が登場!?


さらに気になるのが、日本酒界の次なるブーム! 日本酒のプロの方々が、今気になっているキーワードとは?

「ずいぶん以前は、新潟酒のようにきりりとした辛口の酒が全国的に多かったんですが、それ一辺倒ではなくなってきて、西日本の酒が評価されてきている」(井上さん)や、「今や日本酒は世界中に輸出されて飲まれていますからね。今年のGWに開催される『上方日本酒ワールド』には、岡山から中国料理と日本酒のマリアージュを楽しむ店が出店します」(伊戸川さん)と言うように、日本酒=和食という既成概念をなくした店がすでに登場しているようだ。

さらに、「東京には、中国料理だけでなく、和菓子と日本酒のマリアージュを楽しめる店もあります」(伊戸川さん)との話もあり、もはや日本酒とスイーツを組み合わせるようなカフェなども出てくるかも知れない。さらに、「今や海外でも日本酒は造られているんです。イベントにも、フランスで造られた日本酒が登場する予定です」(伊戸川さん)と言うように、逆輸入(?)日本酒を置く店に出合える日も近いのはではないか。

<この人に聞きました>

日本酒卍固め 主催 伊戸川浩一さん=谷町六丁目の日本酒居酒屋「味酒 かむなび」店主。「蔵朱」、「酒や肴 よしむら」の両店主と共に日本酒愛好グループ「日本酒卍固め」を作り「上方日本酒ワールド」と「日本酒ゴーアラウンド」を主催する。今年の「上方日本酒ワールド2018」は18年4/28(土)に開催

山中酒の店 店長 井上勝利さん=1970年代から日本酒を専門に販売する、専門店では関西でもトップクラスの日本酒販売店「山中酒の店」で05年から働く。現在は、店長として酒の販売を担当する。新規店のみならず、さまざまな飲食店から相談を受け、条件に合わせた最良の日本酒を提案。酒造メーカーからも信頼を得ている

※情報は関西ウォーカー18年2月6日発売号より【関西ウォーカー編集部】

森田周子

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