コーヒーで旅する日本/九州編|夢を追いかけ、サラリーマンから焙煎士へ。真摯にお客と向き合ってきた「木家珈琲倶楽部」の20余年

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

宇城市役所からほど近い住宅地の一角に店を構える「木家珈琲倶楽部」

九州編の第86回は熊本県宇城市にある「木家珈琲倶楽部」。店があるのは宇城市役所や文化施設「ウイングまつばせ」のそばではあるものの、住宅地の一角と決して目立つ立地ではない。市全体の人口が現在5万6000人程度と決して都会ではない宇城市・松橋町に店を開いたのは2002年(平成14年)。商売をするうえでは決して有利とは言えない立地だったと思われるが、2023年に開業21周年を迎えたのは、多くの常連に愛されてきたから。この年月が意味するのは、「木家珈琲倶楽部」が地域に暮らす人々の生活にしっかりと根付き、日々飲みたいコーヒーを焙煎する店として愛されてきたということ。

かつて勤めていた企業では支社を任される重職まで上り詰めたが、それでもコーヒーを生業に生きていきたいと脱サラに踏み切ったマスター・井上隆一さん。井上さん夫妻が「木家珈琲倶楽部」を営んできたこの20余年のこと、そして地域に愛される理由を探る。

店主兼ロースターの井上隆一さん、奥さんの史枝さん

Profile|井上隆一(いのうえ・りゅういち)さん
熊本県・菊池市出身。福岡の大学を卒業後、東京の企業に就職。サラリーマンが性に合わないと、新宿にあった24時間営業の喫茶店でバイトを始める。これがコーヒーのおもしろさに開眼するきっかとなる。両親からの説得もあり、九州に戻り、再びサラリーマンとして働き始める。鹿児島に本社がある企業に勤め、福岡支社にて数年働く。その時代に小型焙煎機を購入し、趣味で焙煎を始める。4、5年趣味で焙煎をしていく中で、本気でコーヒーの自家焙煎店を開きたいと考え始め、奥さんの史枝(ふみえ)さんを説得。もともと会社員時代にマイホームを購入した宇城市に戻り、2002年(平成14年)、「木家珈琲倶楽部」を開業。

ユニークな独断“裏”テイスティングも参考に

フィンランドから輸入したかわいいログハウス

「木家珈琲倶楽部」という屋号通り、店はログハウス調の造り。店主の井上さんはかねてより「コーヒーの店を開くならログハウスで」という思いを強く持っており、その夢を叶えた形だ。冒頭でも述べたが、初めて店を訪れるにあたりカーナビ頼りに車を走らせていて、「本当にここに?」と少し不安になるような普通の住宅街に店はある。店を開業したころは新興住宅地だったため、家の軒数はもっと少なかったそうだが、今では戸建て住宅が軒を並べる。

井上さん夫妻とのおしゃべりを楽しみに訪れる常連も多い

店の目の前にある駐車場に車を停めて店に入ると、ふわりと漂うコーヒーのいい香り。喫茶利用もでき、注文ごとにハンドドリップでコーヒーを淹れてくれる。豆の種類はストレート、ブレンド合わせておよそ45種と多彩で、喫茶ではすべての豆から好みでセレクトOK。

喫茶メニューはコーヒーのみ

豆によって価格は変わり、定番のブレンドは1杯380円というから良心的な価格だ。豆売りは100グラム620円から用意し、どの豆も500グラム、1キログラムと購入量が増えるほどに100グラムあたりの単価が安くなる仕組み。

マスターの独断”裏“テイスティングは豆選びに悩んだときに意外とヒントにされることが多いそう

ユニークなのが、「マスターの独断”裏“テイスティング」と題し、それぞれの豆に「キャッチコピーで例えると」「オススメのコーヒータイム」「飲んでいそうな有名人」が書いてあること。例えば飲んでいそうな有名人のところに、渋めの俳優、硬派なロックスター、著名なスポーツ選手などの名前が書かれていると、なんとなく味の想像ができてしまうから楽しい。初めて店を利用し、豆選びに悩んだら「独断”裏“テイスティング」を参考にしてみるのもおすすめだ。

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