コーヒーで旅する日本/九州編|独特な空気感と叙情的という言葉が似合うコーヒー。「Rainyday’s Coffee」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

一見するとコーヒーショップとは思えない、築50年ほどの小さな建物

九州編の第55回は、大分市大道町にある「Rainyday’s Coffee」。人通りは決して多くない駅裏の住宅地にあり、建物は昭和を思わせるノスタルジックなたたずまいが印象的。店の前には「OPEN」と書かれた小さな看板だけが飾られ、どんな店なのか知らないと、ドアを開けるのにはなかなか勇気がいりそうだ。店内に入ると漂うコーヒーの香りと、陽光があまり入らない重厚な雰囲気が昔ながらの純喫茶を思わせる。「強いインパクトではなく、あえて個性を主張しすぎないコーヒーが目指すところ」と話す店主の近藤一輝さん。トレンドに左右されることなく、自身のポリシーを貫く「Rainyday’s Coffee」の魅力を探る。

オーナーの近藤一輝さん。バリスタ兼ロースター

Profile|近藤一輝(こんどう・かずき)
1989(平成元)年、長崎県上五島生まれ。大学進学を機に大分県に移り住む。学生時代に経験したイタリアンレストランのアルバイトをきっかけに接客のおもしろさに開眼。調理も経験したが、純粋にお客さんと過ごす時間が自分にはしっくりくると、バリスタを志す。大分におけるスペシャルティコーヒーの先駆け、タウトナコーヒーで5年強働き、独立。2019(令和元)年9月に「Rainyday’s Coffee」をオープン。

たおやかに、穏やかに

まろやかな味わいを引き出したいと、ハンドドリップにはフラワードリッパーを採用

「Rainyday’s Coffee」の店主、近藤一輝さんは独特な世界観を持った人だ。まず屋号に“雨の日”と付けているのがどこか繊細なイメージを抱かせた。店を訪れてみると、JR大分駅からも徒歩圏内の立地ではあるものの、幹線道路から一本裏手に入ったマンションやアパートが建ち並ぶ住宅街にひっそりと店を構える。看板も控えめに、目立つことはなく、外観から近藤さんのゆかしい人柄がうかがえるというものだ。

しっとりと重厚なベイクドチーズケーキ(480円)、ホットコーヒー(500円)

上五島で生まれ育った近藤さんはクリスチャン。社会貢献や奉仕という精神が自然と根付いていたからか、サービス業である接客に魅了された。「大学生の時に経験したイタリアンレストランでのアルバイトが飲食の入口です。ホールでお客さまと接することが自分の考える“奉仕”を表現できるのではないかと直感的に思いました」と近藤さん。「Rainyday’s Coffee」の店内には多くの書籍が並んでいるように近藤さんは読書家。理論的にというより、感覚を大切に物事を考えるタイプであることも現在に繋がっていると感じた。

コーヒーならではの接客

コーヒーを媒介にした、緩やかな人との繋がりに惹かれた

レストランで働いたことを機に飲食の道に入った近藤さんが、料理人ではなく、なぜバリスタの道を選んだのか。
「コーヒーショップはほかの接客業と比べてお客さまに気軽にご利用いただけるものであるのに、その割に充実感は大きく、生活に寄り添えるサービスだと私は思うんです。以前、イタリアを10日間ほど旅行した時に、現地のバールにも行ったんですが、客である私に対してバールマンはすごくさっぱりとしていましたが、それが気持ちの良い対応に感じました。コーヒーを通したコミュニケーションが成り立っていて、言葉を交わさなくても関係性を築くことができる。スピード感や一貫性からもレストランのサービスとの違いを感じ、『自分にハマるサービスの形の理想な気がするな』と思いました」と話す近藤さん。

豆売りはブレンド2種、シングルオリジン3〜5種、デカフェ1種をラインナップ

そういった思いから、調理場で働いていたもののバリスタに転向することを志し、大分のスペシャルティコーヒーのパイオニアとして知られる、タウトナコーヒーの門を叩いたのが、近藤さんのバリスタの第一歩となった。

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