野生下の生息数はわずか300~500頭のスマトラトラ。その原因は私たちの生活にもあり!?【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

東京ウォーカー(全国版)

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野生を身近に感じられる動物園や水族館。動物たちは、癒やしや新たな発見を与えてくれる。だが、そんな動物の中には貴重で希少な存在も。野生での個体数や国内での飼育数が減少し、彼らの姿を直接見られることが当たり前ではない未来がやってくる、とも言われている。

そんな時代が訪れないことを願って、本連載では会えなくなるかもしれない動物たちをクローズアップ。彼らの魅力はもちろん、命をつなぐための取り組みや努力などについて各園館の取材と、NPO birthの久保田潤一さんの監修でお届けする。第10回の今回は、仙台市の八木山動物公園フジサキの杜でスマトラトラの飼育を担当する山崎槇さんにお話を聞いた。


黒と茶色の模様が美しい、最も小さなトラ

――仙台市を見下ろす八木山に位置する八木山動物公園フジサキの杜では20年にわたってスマトラトラを飼育。現在はオスのケアヒ(13歳)、メスのバユ(15歳)、そして2021年12月にケアヒの新しいペアとして来園したダマイ(7歳)の3頭がいる

ホノルル生まれのケアヒ(オス)。ケアヒとはハワイ語で「火」という意味だそうだ写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


スマトラトラは、インドネシアのスマトラ島のみの狭い範囲に生息し、トラの中では最も小柄。オスの体長がシッポまで入れて2.4メートル、体重が約120キロ、メスは2.2メートルで体重は約90キロぐらい。ロシアにすむアムールトラは大きな個体だと300キロ程度あるので、いかに小柄かわかると思います。シマ模様が美しいのも大きな特徴で、ほかのトラと比べて黒と茶色のコントラストがはっきりしています。

ケアヒの新しいペアとして2021年12月に迎えられたダマイ。スマトラトラの美しい模様が分かりやすい写真だ写真提供:八木山動物公園フジサキの杜

15歳になったメスのバユ。出産した5頭の子供たちは国内の各園で元気に暮らしている写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


太らせず、やせすぎず。エサの調整がトラの健康を守る

――トラたちの美しい姿を支えるのが、毎日与えるエサだ。動物園ではどのようなエサを与えているのだろうか。

普段のエサは栄養バランスを考えて、脂肪分の少ない、赤身肉の馬肉。メスなら1日3キロぐらいと、鶏頭を約500グラム程度与えています。繁殖を予定しているダマイは特別メニューで、鶏ガラと、鉄分を摂るためにレバーも与えています。オスのケアヒは馬肉を4キロぐらいと、鶏頭が500グラム程度です。

丸鶏に食らいつくケアヒ。野生の片鱗を垣間見せる写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


動物たちの健康で一番気を付けているのがエサ。質にも量にも気を付けています。太らせてしまうと繁殖に影響があり、体調不良の原因に。お腹周りをしっかり見て、やせすぎずちょうどいいところをキープできるよう、こまめに量を調整しています。

ラム肉を食べるバユ写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


また、食欲もチェックすべきポイントのひとつ。彼らは展示場から寝室に入ると、一目散にエサに飛びつき一心不乱に食べるのが普通です。なので、ちょっとでも食いつきが悪い場合、何かおかしいことがあるのだなと気づけます。

こちらは丸鶏を夢中で食べるバユ写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


あとは痛いところがないか、しっかり見ています。野生動物はどこか痛くても、隠して弱みを見せません。しかし毎日じっくり見ていると、歩き方がいつもと違うな、ちょっと痛そうだなと、変化に気づきます。

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